モンゴル相撲の鑑賞方法

観光客向けの、文化・スポーツ・観光大臣のツェデブダンバ・オヨーンゲレル氏による案内

モンゴルでは、少なくとも数世紀に渡って祝われてきた遊牧民の祭典であるナーダム祭の時期となり、モンゴルの力士、調馬師、騎手、そして弓射の選手にとって重要な時期となりました。ナーダム祭の伝統は、13世紀初頭にチンギス・ハーン(ジンギス・カーン)が猛威を振るった頃からおそらく数千年前に端を発する、実に古くから伝わるものです。ナーダム祭は、古代ギリシャの当初のオリンピックと同じと考えることができます。

夏季には、地方のナーダム祭がモンゴル国内の至るところで開催されます。中でも最大のものが、ウランバートルで毎年7月に開催される国家ナーダム祭です。国家ナーダム祭でのみ、優秀な参加者に対して国家的な相撲の称号の数々が与えられます。ナーダム祭の全競技の中で、最もわかりやすいのは弓射です。また、開かれた大草原の中を数キロに渡って、馬たちがどのように競馬を行うのかも簡単に理解することができます。

しかし、外国人の多くはモンゴル相撲に面食らってしまい、つまらないと思ったり長すぎると感じたりするかもしれません。むしろ、相撲は実際には最も興味深く、楽しいナダーム競技です。モンゴル国民は誰もが相撲を理解し、情熱をもって観戦します。

モンゴル相撲の楽しい面や複雑な部分をどのように理解するをここでご紹介します。

まずは彼らの帽子にご注目!

ナーダム祭の開会式が終了すると、相撲が始まり、たくさんの力士がワシやタカの動きをしながら緑の土俵に登場します。これは相撲の1回戦がこれから開始することを意味しています。通常512名の力士で行われるトーナメントでは、2日間に渡って9回の予選相撲が行われます。または、盛大な記念日の年には、同じく2日間に渡って、1024名の力士でトーナメントが行われます。

1つ回が進むごとに、力士の数は半分に減らされ、勝者のみが次の戦いに進むことができます。では、どうして1回戦の帽子が重要なのでしょうか?

1つには、1回戦の256試合がより見やすくなるという点があります。力士が「9本の白い旗」に向かって踊ったり、歩いて行ったり、お辞儀をしたりしている間に、力士の帽子を見てみてください

力士の帽子には、赤いひもがぶら下がっています。また、赤いひもの中には、黄色い線が入っているものもあります。

力士たちを見てみてください!黄色い線が多ければ多いほど、その力士がより上のランクであることを示しています。相撲が始まると、力士は被っている帽子を各々のコーチに預けてしまうため、応援したい力士を覚えておくようにしてください

ランクの高い力士が勝つと人々から称賛されますが、負けたり激しく攻められたりした時は、真のナーダム祭の始まりです!

力士の体にご注目!

長くモンゴル相撲を見てきた観客であれば、力士の体形を分析して、ナーダム祭で誰が健闘するかを瞬時に見分けることができます。強そうな体格のいい力士が勝ち進んでいくと思われるかもしれません。実際には、ことはもっと複雑です。

モンゴル相撲には多くの常とう戦術があります。力士には、スペースに関する制限がほとんど、あるいは全くありません。広々とした土俵では、広い範囲を自由に動き回ることができ、時間的制約もほとんどありません。そのため、力士の中には、素早く動いたり、予想だにしない技を使ったりして短時間で勝負を決めようとしたり、一方で相手を疲れさせながら決定的な動きをせずに試合を長引かせようとしたりなど、様々な策を講じる力士もいます。

細身で屈強な力士は、機敏で、短時間の、巧妙な相撲に長けていますが、一方で、一見柔らかそうな筋肉を持つ、よりしっかりした体格の力士は持久戦に非常に長けています。そのため、応援するお気にいりの力士を選ぶ際は、機敏な短時間で魅せる力士と、粘り強く勝利をつかむ力士の2人の力士を選んだ方がいいでしょう。ほとんどのナーダム祭の観客は機敏な力士を好みますが、多くの場合、スタミナのある粘り強くしつこい選手の方が、最終的な勝者となります。

勝利の瞬間をお見逃しなく!

モンゴル相撲では、対戦相手の肘または膝が地面に触れると勝利となります。したがって、「負ける」を意味するモンゴル語は「膝が汚れる」と訳されます。しかしながら、全身や頭が地面に触れた場合でも、負けとみなされます。

柔道では、手と手を組み合い足と足で払ったりしますが、モンゴル相撲では、力士は手、胴、足のどこでも触ることができます。しかし、対戦相手の頭を掴むような無礼をする人は一人もいません。モンゴルでは、頭は人間の体で最も神聖な場所とされており、相撲競技においても、相手の頭には敬意を表さなければなりません。

ベテランの観戦者は、どのようなテクニックが効果的かを知っており、そのような「空中技」が決まると即座に興奮して叫び声を上げます。あまり知識のない観戦者は、観客たちの熱狂を楽しみながら、ベテランの観戦者に会場で何が起きたのかを説明してもらうと良いでしょう。彼らは相撲用語で、力士が急にかけた技が幾何学的および物理的にどう決まったのか説明することと思います。すべては、一瞬でどのように相手のバランスの中心が変化したかを感じ取ることだ、と言うことでしょう。ある時は理解できるかもしれませんが、ある時は何を言ってるのかわからずにただ観戦のプロからの説明をただ楽しむだけになるかもしれません。

一般的に、ほとんどの技は見て取ることができますし、わかりやすいと思います。中でも、力士が対戦相手を掴んで地面から持上げ、投げ飛ばした時などはよくわかると思います。このような光景はよくあるものです。

バックグラウンドで流れる歌を聞いてみてください

相撲が始まると、バックグラウンドで「長唄」が始まります。この歌は、力士への哲学的なガイドです。ある歌は、黄色いデール(モンゴルの伝統衣装)と弟の馬をガゼルと勘違いして、誤って弟を射殺してしまい、自らの過ちを悔いて止めどなく涙を流した男の話を語ります。あるいは、美しい太陽が上ったり沈んだりする穏やかな宇宙に関する歌もあります。長唄は、時には、チンギス・ハーンの2頭のパロミノ種の馬に関するものであったり、彼らの牧草地となっている特定の地域や、保護区でシカを狩ってはならないという内容のものであったりします。またある時には、愛する女性と結婚することのできなかった男の話を語ることもあります。

ナーダム祭相撲トーナメントでは、毎年、伝統的な長唄音楽を奏でます。バックグラウンドで昔話が歌われている間、力士は勝利のために踊りを踊ったり、地に伏せたりします。人生も試合も続いて行きます。勝者の裏には敗者がいます。これは世の常です。哲学的な長唄は、競技全体を平和的に面白く、それでいて復讐を生まないものにします。

敗北を寛大かつ平和的な振る舞いで受け入れることは、モンゴル相撲において古くからそうあるべきとされる振る舞いであり、観客は自分の敗北を笑顔で受け入れた力士に対し、必ずエールをおくります。しかし、負けたことに異議を唱える力士がいれば、観客は苛立ち憤慨します。そのような場合、ファンは負けたとされる出場者に向かって、「タヒムを差し出せ!」「タヒムを差し出せ!」と叫び、負けを受け入れる際の決まり動作をするよう力士に要求します。

負けた力士がこのような決まり動作をし、上着のベルトを外して勝者が伸ばした右腕の下をくぐると、誰の目にも一目瞭然です。しかし、たまに、若い勝者が年配の敗者の腕の下をくぐることがあり、混乱してしまうかもしれません。これは、若い力士が年配の力士に敬意を払い、年配のよりランクが上の力士に自分の腕の下をくぐるよう強制したくないということを意味しています。モンゴル人はこの種の行動を高く評価し、若い勝者に賞賛を送ります。

初めは体の大きい選手が簡単に勝利

モンゴル相撲には重量による階級がありません。不公平だと思いますか?このような「不公平」はまだあり、最初はモンゴル相撲は見て良いスポーツではないと感じられることと思います。しかし、後々、どんどん楽しくなっていきますので、あきらめないでください。

1回戦と2回戦では、大柄な力士が若くて小柄な力士と対戦するのをよく見ます。これは、出場する512名の力士が、上から順にランクによって一覧に記載され、1回戦と2回戦では、この一覧を折って、最も高いランクの力士が最も低いランクの力士と対戦するようになっているからです。上から2番目のランクの力士は、下から2番目の力士と対戦し、その他も同様です。そのため、(ランキングリストの248番目から257番目の力士の場合)ほぼ同レベルの出場者が相撲を取ることになります。この実力がほぼ同じ力士の戦いが、最も見応えがあります。

このような采配により、1回戦と2回戦のモンゴル相撲はどことなく「自然淘汰」(強い者が勝ち残る弱肉強食)の試合になります。

一方で、3回戦からは「社会淘汰」が始まります。1回戦で負けると思われる力士も、勝利のために戦います。このような力士は一般的に学生か兵士、またはただ相撲を愛する若者だったりします。

1回戦と2回戦を観戦する際は、四六時中スタジアムの中で過ごしてはいけません。この2回の戦いには(豪華な開会式後)ナーダム祭の初日をほぼ丸一日かかるからです。そのため、ベテランの観戦者は、1回戦の最初だけを見て、それ以降は弓射の試合や競馬を見に行ったり、メイン広場でのイブニングパーティーにも参加したりします。ファンの中には、試合結果がわかるようにラジオを持ち歩いたり、テレビでの試合中継を見たりする人もいます。

3回戦は「コール」ラウンド

ナーダム祭2日目の朝、スタジアムはすぐに満席になります。

3回戦が始まる時点では、力士の数は128名に減っています。この数から、よりランクの高い力士は、「ザスール」と呼ばれる行司によって称えられます。ザスールは、歌って力士を称え、大声でその力士の対戦相手を歌でアナウンスします。1回戦から称号を与えられる力士が誕生するまで、力士は自分たちで戦いたい相手を選びます。

これにより、全く異なる試合が開始します。何よりも、高い称号を有するチャンピオンは、残り6試合のために体力を温存しなければならないことを理解しているため、不測の事態を警戒して、戦ったことのない相手をコール(選択)しません。そのため、簡単に勝利できると感じたより弱い力士を選びます。もちろん、結果は必ずしも予想どおりになるとは限りません。

高い階級の力士が対戦相手を選ぶと、同じ階級の力士二人が選ばれないまま残ります。彼らは「残り」と呼ばれます。これら二人の対戦が注目を浴びるのですが、若くこれからスターになっていく彼らの対戦は時に最も興味深い接戦の戦いになります

ですので、最初の召集をかける際に、ザスールは力士と並んで二列に立ちます。二つの列は「左」側と「右」側と呼ばれます。左側のザスールはまず、最上級の力士を称え、彼が選んだ対戦相手を右側から選び、大きな声でアナウンスします。

称賛の歌とは「全モンゴルで最強の、大洋のようでな頑強な負け知らずの勝者(氏名)は、(名前)県の(名前)郡で生を受け、フン帝国建国の2223年目周年、モンゴル帝国建国808周年、モンゴル人民共和国建国93年目、民主主義革命25周年、国家ナーダム祭に敬意を表してやってきた」といったものです。彼は(名前)県(名前)郡出身の力士(氏名)を右側から大々的に呼び、ナーダム祭の観衆の前で彼の強さを公正に試すのです」

今度は右側の角にいるもう一人の力士のザスールは、「指名を耳にした」と大きな声で歌います。

勝者に比べ身体の小さな選手に対しても堂々と指名します。究極の目標は、全9ラウンドをすべて勝ち抜いて最後まで立ち続ける力士になることなのです。ですから、油断ならない政治的な介入が入らなければ、頭のよいハイランクの力士たちは小さく、弱い、経験の浅い対戦相手を選びます。

そうです、正しく読んでいますよ。相撲の世界には政治的なものが多くあります。もう次のラウンドに行けないハイランクの力士たちの中には、若く有望な力士を「助ける」ために彼らを指名してわざと負けてあげる人もいます。このようなことは若手力士が同じ県出身、もしくは同じ学校出身、中にはお金を払って行われることもあります。観客にとってはこうしたことは目にしたくないことで、これを「ナイーラ」つまり「不潔な取り決め」と呼びます。ですので、才能だけで勝ち上がって称号を得た純粋な力士が最も人気があり本物のヒーローとして愛されます。

第4ラウンド—驚きでいっぱい

新聞や組織の多くは全9ラウンドで誰が勝つかの推測ゲームを繰り広げます。賭けではありませんが、とても近いものがあります。なぜなら、推測が当たるとナーダム祭が終わった後に報酬をたくさんもらったりするからです。

最初の3ラウンドまでの推測は比較的簡単です。しかしながら、第4ラウンドからすべての推測は崩れてきます。なぜなら第4ラウンドの選択ルールはまた「折りたたみ」だからです。第3ラウンドが終わるまでに64人の残りの力士たちはトップから最下位までランク付けされリストが折り重ねられます。そしてまた、最下位の力士が最上位の力士と対戦するのです。

しかしながら今度は、この折りたたみは上位の力士にとって最初2つのラウンドほど簡単ではなくなります。この段階で最下位の力士さえも勝者になれるのです。全64人の力士はとても勝負強く、現段階で恐れる力士はいません。ですから、多くのハイランクの力士たちは第4ラウンドで負け、若い新人たちが上がってくるのです。これが第4ラウンドを興奮の渦に巻き込むのです。

しかし、第4ラウンドの本当のなぞは、新人力士たちが、次のラウンドで誰からナチン(はやぶさ)の称号をもらうかなのです。第5ラウンドの開始を待ち望んでいるベテランファンたちは若手有望新人の名前をリストにし、彼らの出身地と相撲「ファイヤーキャンプ」の計算表を作ります。

相撲「ファイヤーキャンプ」とはモンゴルの相撲クラブで、同じ県、同じ市、同じ学校の出身者が集まりナーダム祭の準備をします。通常、ハイランク力士がそのようなキャンプを取り仕切り、自分の技術を磨きながら、若手力士育成に励みます。ルールとしては、「ファイヤーキャンプ」のリーダーは、他に対戦相手がいる場合、同じキャンプ仲間を対戦相手に選びません。

一方で、キャンプのリーダーは次のラウンドで勝ちそうもない場合、わざと自分のキャンプのメンバーを選んで勝たせてあげることで、はやぶさの称号を得る可能性を高めます。

お分かりのとおり、力士の出身はこの段階でとても重要になります。ですから、より長い経験を持って知識を多く蓄えた観客は、第5ラウンドに誰が出場するかをより簡単に推測できます。

第5ラウンド—スター誕生!

第3ラウンドのように、第5ラウンドは長い称賛と指名でスタートしすべてのハイランクの力士はあたたかく迎えられ、彼らが選んだ対戦者が呼ばれます。

大興奮の対戦が始まるまでには、称賛がゆっくりと続きますが、観客たちは第5ラウンドは始まるまでには、誰がはやぶさになるのか、ということだけを目にしたいのです。

はやぶさはナーダム祭では魔法の言葉です。若い力士にとって夢の称号です。なぜなら第5ラウンドを勝ったということは、国の称号が初めて与えられることになるからです。称号はモンゴルの大統領の命令によって授与されるので、若い力士たちは称号獲得を切望します。そしてファンたちは新しいスターの誕生に大歓声で称えます。

国の称号を持っている力士がこのラウンドで勝利を収めても、ほとんど誰も関心を持ちません。若手でまだ称号を持っていない力士たちが新しい称号を獲得することにファンたちの全注目が集まります。32人の力士から6〜7人のはやぶさが誕生すればその年の収穫はとても大きいです。しかし大抵、このレベルに達する力士は2〜5人程度です。はやぶさが一人しか誕生しない年もあります。

たくさんのはやぶさが誕生しそうな時はになると、勝つために別の戦略ゲームが始まります。これを「タイミング」と呼びます。若手力士がラウンド開始後なるべく早い段階で称号獲得をかけて戦うことを意味しており、ほんの1分でも早く獲得しようとします。なぜこれがそんなに重要なのでしょう?なぜなら後々、同じランクの力士が称号をかけて戦っている場合、早く勝利を収めた方の力士に称号が与えられるからです。ですから、力士はラウンド開始後なるべく早く勝利を収めようとします。

第6ラウンド—新しいスターの舞!

第6ラウンドが始まるまでには、大型でがっちりとした選手たちが対戦の大半を占めていることに気づくでしょう。16人の残った選手たちのうち小柄、もしくは細い選手はほとんどいません。なぜでしょう?なぜならば5つのラウンドが終わって、もっとも厳しい練習に耐えてきた選手たちだけがこれから始まる大変なラウンドに耐え得る体力を持っているからです。これらの大柄な選手たちを倒すことが新しいはやぶさが成し遂げなければならない主な課題です。

第6ラウンドを見るのは気楽で楽しいものです。新しいはやぶさたちはこの段階で美しく、勇気ある技を披露します。この時点で負けることを恐れていないので、彼らは大胆で楽しい対戦を行い観客たちを喜ばせます。ハラハラする第5ラウンドが終わって、ファンたちは美しく、驚きに満ちて、勇敢な相撲を満喫します。

通常新しく誕生したはやぶさたちは、あっと言わせる技を披露しますが、このラウンドで破れていきます。しかしながら、第6ラウンドで1人か2人の新しいはやぶさが勝ち残り、もう一つの称号カートサガ(ケストレル)を獲得することがあります。そうなると、大会の流れは大きく変わり、観客たちは叫び、興奮の口笛を響き渡らせます。

第7ラウンド—根競べ!

もし若手新人がこのラウンドに持ちこたえることができたなら、新しい称号は像となります。この段階で勝ち残った力士はたったの8人です。おそらく8人のうち7人は像の称号を必要としないでしょう。なぜならすでにこの称号を手にしていてもっと高い称号であるライオンや勝者チャンピオン、ダブルチャンピオン(ダヤン・アヴァルガ)もしくはトリプルチャンピオン(ダーハン・アヴァルガ)などの獲得を目指しているからです。

一人でも像の称号獲得を目指している力士がいるならば、第7ラウンドはこの年の大会で最も人気の対戦となるでしょう。特に力士が称号を手にしたらなば、観客たちは大興奮します。像の称号を得るのは大スターです!

観光客にとっては新しい像の誕生はそれほど感動的ではありません。しかしモンゴル人観客にとっては、あなたの一番好きな選手だったり、同じ出身の選手が像を獲得したら、これはとても特別なことなのです。

観光客の方には新しい像がどの県出身なのかをメモしてもらうのがいいでしょう。そこがあなたがこれから向かう地域かもしれません。もしそうであれば、新しい像の名前も書き残しておきましょう。地元人と話をする時に会話に彼の名前を使ってみてください。地元で一番人気の選手の名前を知っていると、遊牧民地域での滞在がどんだけ快適で楽しくなるか分かると思います。

第7ラウンドで退屈なのは、これが根競べの戦いとなるところです。ナーダム祭の究極の勝者決定まであと少しとなっていますから、大柄な力士たちは危険な技は試みようとしません。注意深く、ゆっくりと、時には相手を疲れさす、もしくはイライラさせて危険な技を仕掛けさせるためにわざとゆっくりと取り組んでいきます。根競べに自信のある力士は意図的に決定的な技を仕掛けてきません。その代わり、相手をグッと掴み、長い時間をかけて抑えこみます。これは「ウヤ」と呼ばれ、「輪金」とか「縄」という意味です。縄に縛られたように、力士は身動きできません。

ですから、気の短い観客はウヤをする力士たちに動くよう要求しますが、彼らの戦術はなかなか変えられません。結果が30分以上出ない場合、審判らはどちらの選手に自分の得意とする掴みを仕掛ける権利を与えるかを判定します。掴む権利を得た幸運な力士が成功しなかった場合、対戦相手が今度は自分の得意とする掴みを選びます。こうすることで、審判たちは力士たちが技をより早く決めさせることができます。

以前は時間制限がなく、第7ラウンドからの試合はひどく長いものでした。力士たちは終わりのない根競べを続け、試合がものすごく長引いていました。

第8ラウンド—疲労と闘うスターたち!

あなたが四強力士の一人だとします。7つの全ラウンドを勝ち残るまでには強敵との戦いもあったことでしょう。身体は疲れ、汗は吹き出て、流れる汗が入って目は痛いでしょう。喉を潤し、座り込み、休み、きつく濡れた衣装を脱ぎたいでしょう...もしあなたが彼らだったら。第8ラウンドで疲れたスターたちの動きは、これまでよりもずっとスピードが落ちてきます。このラウンドで素早く、鋭い技を見せたら、この力士はこのナーダム祭のためにものすごい練習を積んで想像も絶するほどの準備をしてきたはずです。ナダームの大会でここまで上位に上がってくる上で最も疲れが出てくる時期なので、観客たちはこの段階で相撲のスピードが落ちているしまっていることに理解を示します。

8ラウンドでは観客たちはどの力士が決勝に進むか知りたくてしかたありません。このラウンドで初めて勝利を収めるならば、ガリッド—童話に出てくる天国の鳥と名付けられた称号を手にするでしょう。しかし、誰もこの称号について気にかけていません。その変わり、全観客がワクワクしているのは次の第9ラウンド、つまり最後の対戦です。

4人の力士のうち一人か二人がまだ十分なスタミナがあって「草原を乱す」(つまりゆっくりとした相撲ではなく不意を突く素早い技を)ようなことがあれば、観客たちは大いに喜び歓声をあげます上げます。この段階で素早い攻撃を目にすることはとても稀なので、ナダーム祭が終わって長い時間が経っても観客たちは相撲のテクニックについて語り合います。

第9ラウンド—ついに!

ついにモンゴル相撲の最終章までやってきました。おめでとうございます。この段階になるとあなたはモンゴル人同様誰が究極の勝利を手にするか知りたくてワクワクするでしょう。観光客にとっては、勝者は誰でもいい、と思うかもしれせん。

モンゴル人にとっては、力士がどの県出身かによって興奮度は変わってきます。もしも決勝進出力士が自分の県出身ならば、県民総出で彼の優勝を祈願するでしょう!

ライオンの称号は初めてのナーダム祭の勝者に与えられます。512力士が参加する大会でナーダム祭勝者に二回輝いた優勝者もしくは、1024力士が参加したトーナメントで優勝した経験のあるものだけがチャンピオンの称号を得られます。

ナーダム祭の決勝戦で感動的な瞬間はその年一年中一番人気の映像となります。ですからもし最後の感動的な瞬間が近づいてきたら、全スタジアムから溢れ出る叫び声と興奮とともにその瞬間を録画しましょう。

決定的な勝利の瞬間がついてに来ると全スタジアムは観客が最大限に響き渡らせる叫び声や歓声や口笛の音で揺れ、あなたはこの決定的な瞬間に決定的な場所にいることを実感するでしょう。スタジアムのエネルギーは本当に美しく最高の瞬間です。これこそがナーダム祭です!

相撲トーナメントの閉幕では、大統領令の新しい称号が発表されます。その後決勝を戦った二人がモンゴル大統領に近づき賞を受け取ります。究極の勝利者は勝利が決まった瞬間からスタジアムを後にするまで「地面を歩き」ません。勝者は人々に持ち上げられ彼らの肩に乗り表彰台へ上り、表彰台からそのままスタジアムを後にします。

相撲をもっと見れる場所

国家ナーダム祭だけが相撲を見ることのできる唯一の場所ではありません。

ナーダム祭は、この記事の最初に説明したように、古代から続く遊牧民の採点でモンゴル政府がいつも資金を出しており、現在でも毎年開催されています。ナーダム祭は国が共産主義政府下であろうと、共産党主義後の最も厳しかった経済困難の際にもモンゴル国内で常に行われてきました。

国家ナーダム祭は国の予算で運営されているため、地元のナーダムは地元の資金集めや地方政府予算で賄われています。真のナーダム祭は商業目的で決して行われません。また賭けにも関与していません。7月7日から20日の間、時にはその期間を超えて、モンゴル全土でナーダム祭が開催され、最大の祭はウランバートルで7月11日から13日に開かれます。



様々なナーダムが開催されている中、少なくとも2万2400人もの力士たちが出場し、子供達が乗った1万5000千頭の馬のレースが行われ、9500人もの射手が地元観客の前で弓を放ちます。言及したとおり、地元ナーダム祭を開催する伝統は何千年前から今日まで続いていますが、その理由は地元遊牧民が集まる最大のイベントだからです。もちろん、全国321か所で開かれるナーダム祭には文化的に興味深く、素晴らしい大会がありますが、観光客に最も人気のあるのはウランバートルで開かれるナーダム祭です。

相撲はすべてのナーダム祭で事実上同じものですが、地方で開かれるナーダム祭の参加力士数(32〜256人)は少なくなります。そして地元ナーダム祭の勝者はアイマグとソムという称号をもらいますが、国レベルの称号はもらえません。

ナーダム祭の開催時期以外に訪れる観光客のみなさんでモンゴル相撲を観戦したいという方におすすめなのが、ウランバートルにある相撲宮殿ですが、必ず特定の日に訪れなければなりません。

祭日、または重要な記念日の前かその期間中に、相撲宮殿では128〜265力士のトーナメントが組まれます。

以下が最も面白い相撲トーナメントが開催される祭日の日程です。トーナメント観戦するには旅行者は前もって旅行会社に問い合わせをしてみてください。祭日の一日前にトーナメントが開催されることもありますし、その祭日に開催されることもあるのです。

最も人気のトーナメントは、


これらの国が資金を出すトーナメントに加え、会社や組織、家族や個人が資金を出す、多くのトーナメントがあります。

観光客はナーダム祭で相撲をとれますか?

国家ナーダム祭や、アイマグ・ナーダム祭に出場するのはとても難しでしょう。相撲トーナメントの主催者は非政府機関のモンゴル相撲協会で、協会は一年をかけてすべての力士を見て登録し、重要なトーナメントの力士のランキングが問題なくスムースに組まれるか運営します。ですから、ランキングのデータベースに入っていない力士が重要なトーナメントに参加することは不可能なのです。

しかしながら、ソム(郡)ナーダムはかなり規制のゆるいものです。ほとんどの新人力士は若い成人か、学生でまずソム・ナーダム祭で初めて相撲に参加してみます。そしてソムの中にはナーダム祭で観光客が参加できるものがあります。最も旅行者に友好的なナーダム祭は、フブスグル湖近くのハトガルの町で行われます。ハタガルのナーダム相撲トーナメントは過去10年ほどの間に観光客を出場させており、多くの観光客がこれまで実際に相撲をとってきました。しかしながら、外国人観光客でソム・ナーダム祭で優勝した人はいません。もし優勝者が出たら、彼の称号はソムの像になります。しかし覚えておいてください。第1ラウンドで多分、折り返し対戦のためにソムのトップクラスの力士と対戦することになるでしょう。